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括弧に魅せられて道を外した名前のないプログラマ

ピープルウェア読んだ

読了。

目次はこんな感じで、全6部34章から成る本です。

第Ⅰ部 人材を活用する
第1章 今日もどこかでトラブルが
第2章 チーズバーガーの生産販売マニュアル
第3章 ウィーンがきみを待っている
第4章 品質第一:時間さえ許せば
第5章 パーキンソンの法則の改訂
第6章 ガンによく効く?「ラエトライル」

第Ⅱ部 オフィス環境と生産性
第7章 施設監査本部
第8章 プログラムは夜できる
第9章 オフィス投資を節約すると
第10章 頭脳労働時間 対 肉体労働時間
第11章 電話、電話、また電話
第12章 まずはドアから
第13章 オフィス環境進化論

第Ⅲ部 人材を揃える
第14章 ホーンプロワー因子
第15章 お手玉使いの曲芸師を雇う
第16章 ここにいるのが楽しい
第17章 自己修復システム

第Ⅳ部 生産性の高いチームを育てる
第18章 全体は部分の和より大なり
第19章 黒集団チームの伝説
第20章 チーム殺し、7つの秘訣
第21章 スパゲティディナーの効果
第22章 裃を脱ぐ
第23章 チーム形成の不思議な作用

第Ⅴ部 きっとそこは楽しいところ

第24章 混乱と秩序
第25章 自由電子
第26章 眠れる巨人よ、目を覚ませ

第Ⅵ部:ピープルウエアの小さな続編
第27章 続、チーム殺し
第28章 競争
第29章 プロセス改善プログラム
第30章 変化を可能にする
第31章 人的資産
第32章 組織の学習能力
第33章 管理の究極の罪
第34章 コミュニティの形成

控えめに言って管理者ないしチームのマネジメントに関わるお仕事をやっているヒトは読むべき本だと思いました。今まで幾つかの「やる気」に関する本を読んできましたが、今回の本は「チーム」に関わる部分に重点を置いているので一作業者という視点ではあまり役に立ちませんが、世の中の管理者相当のヒトはこういうことを考えて"管理"してたりするんだろうなーという心のモヤモヤした言語化出来ていない部分を綺麗に言語化してくれるので、そういう意味では十分に読む意味があると思いましたし、チームに関わる話が多数あるので自分自身の振る舞いが与えるであろう影響というのも勉強になりました。

どの部/章も大変興味深いのですが、僕が気に入ったのは「第Ⅱ部 オフィス環境と生産性」と「第Ⅴ部 きっとそこは楽しいところ」でした。近年ではベンチャー企業なんかではオフィス環境に力を入れているところが多いですし、そうでなくてもベンチャー気質の大きい会社であればオフィス環境に力を入れていることでしょう。また、最近では「仕事とは楽しいものだ」という認識も広まりつつあるので、そういう部分で共感しやすい話でした。

本書で当たり前のことながら再確認させられたのが、本当の意味での「チーム」はただ単に一緒に仕事しているだけではなくお互いに信頼というネットワークで繋がり合っていて同じ目標を目指せる集団を指すのだというところで、やっぱりそうだよなーと改めて感じました。
第18章に「結束チームの概念」という話があり曰く、

結束したチームとは全体は部分の和より大なり、つまり、チームが個人個人の力を単純に加えたものよりも大きな力を発揮する程度にまで、人びとが強く結束しているグループのことである。そんなチームの生産性は、同じ人々が結束しないで働いたときよりもずっと高い。

とのことでした。

ということでいつもどおり、興味深かったフレーズを幾つか紹介して終わろうかと*1

  • 政治的要因とは、直接関係しない、意思疎通の問題、要員の問題、管理者や顧客への幻滅感、意欲の欠如、高い退職率などであった。人が関係するという観点で仕事を見るとき、よく政治的という言葉を使うが、これをもっと正確に言い表す言葉がある。それは、プロジェクトの社会学である。
  • 間違いを許さない雰囲気が社内にあると、担当者は消極的になり、失敗しそうなことには絶対に手を出さなくなる。
  • 製造作業では、担当者を機械の部品の一つとして考えると便利だ。部品が擦り減ったら新品と替える。取り替える部品は、元の部品と交換可能である。部品は員数をまとめて注文する。
  • そして、いろいろな経験をした後に、人は誰一人として取り換えがきかないと悟るのだ。管理者は、本当はキーマンが辞めるのを恐れているのに、キーマンはいないと思い込もうとしている。管理の本質は、人が残るか辞めるかに関係なく、仕事さえ確実にこなせば良いというのだろうか。
  • 彼女はチーム内で「触媒」の役割をしているとの結論に達した。彼女がいるだけで、チームの結束は固くなった。彼女がいると担当者間の意思の疎通が良くなり、一緒にやっていこうという気になった。彼女が加わるだけで、プロジェクトは楽しくなった。
  • 例えば、平均的なソフトウエア開発者は、ソフトウエアに関する本を、一冊も持っていないし、一度も読んだことがない。
  • 大部分の企業は、退職の統計さえ取っていない。実際問題として、熟練作業者が辞めた場合、補充にどのぐらいのコストがかかるかは誰にもわからない。その結果、生産性を議論するとき、退職はありえない、あるいは、退職してもタダ同然で補充がきくとの前提で話を進める。
  • 一生の間に、いろいろな原因で感情が高ぶることがたくさんあるが、オフィスで感情を刺激する最大の要因は、自尊心を傷つけられることである。
  • 雪が降りしきるある日、私は病床から足をひきずってオフィスヘ行き、顧客デモ用の不安定なシステムを立て直そうとしていた。シャロンは、部屋に入ってきて私を見つけ、コンソールの前で倒れそうになった私を支えてくれた。そしてちょっと姿を消したかと思うとスープをもって戻り、私に飲ませて元気づけてくれた。私はきいた。「管理業務が山ほどあるのに、どうしてこんなことまでできるんですか?」シャロンは専売特許のにこやかな笑みを顔一杯に浮かべて答えた。「これが管理というものよ」
  • 力のある管理者は、チームのメンバーが頭を丸坊主にしようがネクタイをしめないでいようが一向に気にしない。チームの誇りの対象は、チームメンバーが成し遂げた成果だけである。
  • 優秀な部下は、自分たちが仕事上本当の価値で評価されているのではないこと、仕事に対する貢献度が髪型やネクタイほどには重要でないことに気付きはじめ、遂には会社をやめてしまう。
  • 企業が従業員の優秀さを認めないという印象は、個人として評価されていないという感じを従業員に抱かせる。同僚が次から次へと辞めていくと、翌年まで辞めないでいたら、何か無能扱いされているように思う。
  • 人は、他と違った扱いを受けることに魅力を感じ、注目されることを好み、珍しいものに好奇心をよせる。これはその後、ホーソン効果と呼ばれるようになった。つまり、ホーソン効果は、人は何か新しいことをやろうとしたとき、それをよりよくやろうとする、ことを示している。
  • 自分がこれまで携わった仕事の中で、特に楽しかった経験を思い起こしてほしい。そして、何がその体験を楽しくしたかを考えてほしい。すぐに思いつくのは「挑戦」だろう。楽しかった仕事の経験を振り返えると、いつもかなりの挑戦的要素を含んでいるのだ。
  • 大切なことは、人々が仕事をすることで得られる喜びは、仕事そのものが本来備えているものから得られる喜びよりも大きいことである。
  • この上司は、自分の部下を信頼していなかった。顧客に提示できないものまで部下が見せないか心配した。部下の失敗が自分の立場を悪くすることを恐れた。自分の判断だけが正しく、他人の判断は疑わしいのだ。
  • 品質低減が最初に破壊するのは、長い間培ってきたチームの一体感だ。まやかしの製品を開発している開発者同士は、互いに視線を避けるようになる。共同で製品を完成させるという意識はないのだ。自分たちがやっていることをやめられるなら、救われた気持ちになると、みんなが感じているのである。プロジェクトの終わりには、グループのメンバーと別れ、もっとよい仕事につけるように全力を傾けるのだ。
  • 部下に自分の評価の一部を委ねてることは、少々乱暴で恐ろしいことと思うかもしれないが、それがみんなに最善を尽くさせる道なのだ。そうすれば、チームの中に何かしら大切なものが醸し出される。チームの一人ひとりは、割り当てられた仕事をただ仕上げるのではなく、チームの中に生まれたお互いの信頼関係こそが、本当にこのチームで仕事をしてよかったという報いとなって現れることを、みんなが確かめ合うようになる。これが裃を脱いだ管理というもので、チームを形作っていくのに最も大きな効果がある。
  • 管理者は、魅力的なプロジェクトにしか人が集まらないのではないかと心配だったが、杞憂だった。ありふれたプロジェクトにも応募してきた。自分が働きたいと思っている人と仕事ができる方が重要だったのだ。
  • 問題は、働いている人たちがやってほしいと思っているほどには、会社は打ち上げが必要と考えていないことである。満足感を与える「拍子木の音」を4年間も全く鳴らさない仕事では、グループの人間が「この仕事が終わるまえに、オレは死んでしまうのではないか」と思って、次々と辞めていく。特にチームが一体となりかかったときには、頻繁な打ち上げが必要である。チームのメンバーには、共に成功を祝い、祝うことを喜ぶ癖をつけることが必要だ。これは、チームにはずみをつけるメカニズムの一つである。
  • 人間が祖先から受けついだ記憶のどこかに、仕事とは煩わしいもの、という考えが潜んでいる。例えば、何かをやっていてそれが楽しいなら、それは本当の仕事ではない。仕事を本当に楽しくやるのは、罰あたりである。楽しみ過ぎてもよくないし、全然楽しまないのもよくない。楽しむことで金をもらってはいけない。本当にしなければいけないのは、仕事の上で何か楽しみ以外のもの、何か仕事らしいと感じるもの、を探すことだ。しかし、そんなことをしたら、そこらじゅうにいる人と同じように、退屈し、疲れきって、そして、みじめになるだけだ。
  • ジェリー・ワインバーグは、ある種の答えを持っている。彼が言うには、人は、期限通りに仕事をするために多くの残業をするのではなく、仕事が期限通りできそうもないことがわかったときに、非難から身を守るためにそれをやるのだそうだ。
  • しかし、現代の世界における標準化の偉大な勝利は、ほとんどすべてが標準インタフェースによる成功であることは、指摘しておくべきだろう。ねじ溝の規格、または単三電池、またはカセットテープなどの規格は、対応する部品とどのようにインタフェースを取るか、といった最終製品についてこまごましたことは決めているが、これらの製品を作るプロセスに関するものは一つもない。
  • 変化させることが我々の仕事なのだから、我々は、変化について議論する必要がある。
  • 満足のいくコミュニティ作りに成功した組織は、人を引きつける。コミュニティ意識が強くなると、そこから出ていこうとしなくなる。

*1: Kindle で読んでたけど 97 箇所もハイライトしていたらしい