(define -ayalog '())

括弧に魅せられて道を外した名前のないプログラマ

モチベーション3.0を読んだ

AgileJapan2012(2013じゃなくて、去年!!)でJonathan Rasmusson*1の講演中に流されたDan Pinkの動画や書籍の紹介を見て興味を持ち、AgileJapan2012直後に購入した本だったんだけど、およそ1年経ってようやく読むに至った。*2というわけで読んだ感想とかでも。

当時の僕が見た動画は以下。

TEDにもDan Pinkの話があるので、そちらも検索して見てもらえると良いかもしれない。

モチベーション3.0ってどんな本?

まず書籍のタイトルにある<モチベーション3.0>だけど、これは人を動かすための基本ソフトがあるという話で、それのバージョン3.0ということ。1.0から並べるとこんな感じ。

<モチベーション1.0>生存を目的とする人類最初のOS<モチベーション2.0>アメとムチ=信賞必罰に基づく、与えられた動機づけによるOS。ルーチンワーク中心の時代には有効だったが、21世紀を迎えて機能不全に陥る。<モチベーション3.0>自分の内面から湧き出る「やる気!」に基づくOS。活気ある社会や組織をつくるための新しい「やる気!」の基本形。

で、2.0のとこに書いてありますが、著者は21世紀を迎えて<モチベーション2.0>は機能不全に陥ったので、抜本的な解決法として<モチベーション3.0>にアップグレードする必要がある、と書いてある。世間ではWindowsXP問題としてOSのアップグレードが必要だともちきりですが、コンピューターのOSだけではなくて人間社会のOSも入れ替える時期なのかもしれないですね。
興味ある人は書籍の277ページに「本書の概要」とあるので、本屋さんに立ち寄った時にでもそのページをめくってみるといいかもしれない。

特に気になったところをピックアップ

SQ3Rな読み方しようかなって思ったんですが、元々動画を何度も見ていてTEDも見ていたのでDan Pinkの主張はある程度わかっているつもりだったので、そのまま流して読みました。例によって興味深かったり、面白かったりと気になるところが沢山あったので、ちょっと書きだしてみます。

  • 日本企業の現状の問題点は、成果主義を採らなければ会社は一部のできる人におんぶにだっこで不公平、成果主義に走れば社内がギクシャクして不安定になる、というジレンマである(訳者まえがきより)
  • ソーマキューブ
  • マイクロソフト社のMSNエンカルタがサービスを終了したことと、無償のボランティアで作られたウィキペディアが世界最大規模と人気を誇る百科事典に成長したことは、人間のモチベーションに関する従来の見方では、結果を説明することが難しい。
  • 2008年ヴァーモント州がlow-profit limited liability corporation(L3C)という新しい企業形態をアメリカで初めて認可した。「営利目的の企業のように運営されて、ささやかな利益を生み出すが、主な目的は、有意義な社会的利益を提供することにある」
  • 「ヴォケーション・ヴァケーションズ」お金を使って、わざわざ本業とは異なる他の仕事を体験する。
  • 「基本的な報酬ライン」は適切である必要があり、結局、食うために生きている、というレベルでは、モチベーションはまったく上がらない。
    • 報酬ラインが満たされてくると、アメとムチは、意図した目的とは"正反対"の効果を生み出し始める。
  • ソーヤー効果。「"仕事"とは、"しなくてはいけない"からすることで、"遊び"とは、しなくてもいいのにすることである」
  • 外的な数値だけを重要な目標とし、それに報酬をリンクしたときに問題となるのは、たとえ倫理にもとる道であっても、そこへいたる最短ルートを選ぶ者が現れる。
  • 「ある行為に対してネガティブな結果(罰金など)が科されるとき、その特定の行為は減少する」という考え方。
    • 実際は想定と違う結果が出ている。道徳的な義務感から、純然たる取引になるため。
  • 短絡的なものの見方を生む短期思考。「目標の存在により、従業員は短期の利益ばかりに短絡的に集中するようになる。その結果、組織に打撃を与えるかもしれない長期的影響を見過ごしかねない」
  • アメとムチの致命的な7つの欠陥。
    • 内発的動機づけを失わせる。かえって成果が上がらなくなる。創造性を蝕む。好ましい言動への意欲を失わせる。ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する。依存性がある。短絡的思考を助長する。
  • タイプIとタイプX
  • 仕事に興味を抱くことは、「遊びや休息と同じくらい自然」である。クリエイティビティや創意工夫の才は、すべての人に広く備わっており、適切な条件のもとなら、誰もが責任を感じ、責任を求めさえする。
  • ROWE、完全結果志向の職場環境。決められたスケジュールがなく、社員は好きな時間に出社する。決まった時間帯にオフィスにいる必要はない。さらにオフィスに来る必要もない。自分の仕事をやり遂げ結果を出せば良い。
  • 「マネジメントとは、オフィスを歩き回って、社員が出社し、仕事をしているかどうかをチェックすることではありません」
  • 従業員は経営資源ではなく、パートナーシップである。
  • フレックスタイム=>「信用詐欺」。
  • アトラシアンのフェデックス・デー。3ヶ月に1度ソフトウェアのことならどんな問題でも取り込める1日。
  • ウィリアム・マックナイト「優秀な人を雇ったら、あとは好きにさせること」
  • 報酬が時間に基づいて生じているのなら、チャージできる時間こそが得ようとする目標となる。
  • ゴルディロックスの仕事」
  • 人の信念が熟達の内容を決定づける。自分自身と自分の能力に対して抱くわたしたちの信念(自己理論)が、自らの経験に対する解釈を定め、熟達の限界をも定めてしまう可能性がある。
  • マスタリーはマインドセット
  • 拡張知能観と固定知能観。「固定知能観は容易な対処法を探ろうとする」
  • 「努力とは、人生に意味を与える諸々の事柄の一つである。努力するということは、その対象となるものに意味があるとあなたが見なすことである。それが重要だからこそ、人はいとわずに努力するのだ。もし何にも価値を見出さなかったり、価値あるものに向けて熱心に努力しないようであれば、あなたの人生は不毛となるだろう」
  • 「企業が予算の一部を事前事業費に割り当て、その費用を書く従業員に再分配することにより、従業員の感情的な満足度を挙げられる。すなわち、従業員にはそれぞれが選択した慈善団体へ寄付を納めるようにしてもらう。そうすれば、各団体が恩恵を受けると同時に、従業員も満足感を抱ける」

と、いったところですかね。

おすすめしたい人

最近モチベーション下がってるなーっていう人なんかは読むと良いかもしれませんね。第3部にはタイプI(内部からの欲求をエネルギーとする人のタイプ)のツールキットとして、モチベーションをコントロールするための手法など書かれているので、ここだけでも読む価値あるかも?
こういう本って経営者とか管理職の人こそ読むべきでしょ?って思われがちかもしれないけど、教育に関わる人とか、新しく入ってきた後輩とどう接していけばいいか悩んでる、とかそういう人が読んでもいいと思いました。

そんな感じで、読書記録でしたん。

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

*1:アジャイルサムライの著者

*2:寝かせておくと旨味が増…さないか